やがて君になる – 仲谷鳰

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一般紙に現れて圧倒的な評価を受けた百合界のスーパースター漫画。「百合だから評価された」というより「複雑な感情を扱う作品が、百合のフォーマットで出てきた」ことが色々な意味で重要なんじゃないだろうか。

概要

高校に入ったばかりの小糸侑は、中学卒業の時に仲の良い男子に告白された返事をできずにいた。そんな折に出会った生徒会役員の七海燈子は、誰に告白されても相手のことを好きになれないという。燈子に共感を覚えた侑は自分の悩みを打ち明けるが……。電撃コミック大賞金賞作家が描く、ガールズラブストーリー。 – 月刊コミック電撃大王公式サイト

当初は「なんかギスギスしそうだし物見遊山で楽しもうかな」ぐらいに思っていたのだが、心情描写が巧みで毎回感心している。女性にしか書けない怖さってあるなぁ、と前から思っているが随所でそんな感じ。

各巻毎の感想

1巻

人からの評価を気にして無理をしながら『誰からも特別に思われる少女』をやっていた先輩に『特別扱いしませんよ』って言ったらめっちゃ迫られたでござる、という話。恋愛感情分からないって言ったのに私で目覚めちゃったのかよズルいよみたいな感情描写がなんか新鮮だ。

ふと思ったのだが現在二大百合漫画と言えるのがこれと「あの子にキスと白百合を」(記事)だが、両方とも百合姫ではなく、これはコミック電撃大王、あのキスはコミックアライブで連載されているんだよな。つまり専門誌ではなく広く知られる一般紙に掲載するほうが人気が出ている。専門誌のパイってまぁ小さいんだろうなぁ。

2巻

ネット上で面倒くさいと言われることが多い燈子だが、実は自分の気持ちと裏腹に行動した侑がややこしくしているんだなぁということが何となくわかる巻。デレるの信じられないくらい早かった燈子自体は(侑の気持ちを推し量れないくらいに)まっすぐだしね。相手に好かれたけどどうしよう、って言うのはいかにも女性的な悩みだな。

3巻

沙弥香先輩がちょっと掘り下げられる巻。大抵の恋愛ものってこのぐらいの巻から脇役の恋愛とかやり始めるけど、あくまで侑と燈子中心で掘り下げてるの地味に凄い。結構「別ライン」になりがちなんだけどね普通。

ライバルキャラなんだけど、燈子のことをよく考えてくれているキャラであることもまた確か、というか燈子のこと気遣って距離置いて一緒にいたのに急に現れた侑にまさかの入れ込みとかハーレムアニメの幼馴染キャラ並みに可哀想な立ち位置だよなこの人。でも、堂島「七海先輩、小糸さんのこと名前呼びでしたっけ?」→沙弥香先輩(いいわよ堂島くん!)でいい性格してて吹いた。生徒会メンバーって、槙君が「観測者」なのとは別に堂島君が一般人男性代表みたいなポジなのかな。百合を知った時に堂島君は引きそうなんだよな。

4巻

演劇練習&合宿回。「演劇の内容という作中作が燈子の抱える現状そのもの」というメタ構造が入ってきて思わず唸る構成だ。燈子が自分の姉を知る人間に「全然似てないね」って言われて愕然とする展開も合わせてキャラを揺さぶる方法が凄い上手い。

そんな中で合宿回はシリアスなギャグ多くてダメだった。温泉回って普通サービス回とかなんだけど(掲載紙が電撃大王だしね)ビアン3人で入ると心理戦みたいになって、オチが(((寝るとき3人じゃなかったら間違いが起きてたかもしれないから良かった~~)))ってなんだよ!感心する描写の連続の途中にこれ入ってくるから余計笑ったぞ。

5巻

メタ構造含んだ劇中劇を「過去を基準にして決めたら、今の時間に意味がなかったみたい」と変える展開は前回に続いてお見事。沙弥香の「どうしてこれを自分が出来なかったのか」っていう独白のシーン素晴らしい。

はっきりと侑と燈子が中心の話なんだけど、毎回脇役の話してる気がするなぁ。メタ構造の起点になるこよみとか、百合漫画なのに失恋する異性愛者として登場する朱里みたいにキャラの使い方が上手いんだな。恋愛を主軸にした作品ってこういうキャラの恋愛に逸れていくこと多いけどそういう兆候が無いのも地味に凄い。

6巻

燈子の念願が叶い転換点を迎える巻。一大イベントが終わっても人生は続くし人間は変わっていく、というわけで侑がとうとう燈子に告白したら……というところで終わり。正直もっと酷いことになる(「特別視しないところがよかったのに」みたいなこと言われるとか)と思っていたのだが、燈子もずいぶん成長したなぁ。「違うの待って聞いて」みたいな感じだから、これからアニメが始まる直前でクリフハンガーきよったで!って訳でもない。終わり方は決めてある作品だと思うから、ここから一悶着あってまとめに入っていくんだろうか。

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