虐殺器官

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プロデビューから2年程度で逝去するも、残した作品が高く評価されたSF作家、伊藤計劃の処女作のアニメ化。

テロに対する恐怖によって過剰なまでの監視社会になった先進国が平和になっていくのに対し、途上国では内戦が激化している近未来世界。虐殺の起きる国に共通して一人の男が関わっていることを突き止めた米政府は、米情報軍に勤める主人公クラヴィスにその男ジョン・ポールを捜索する任務を与える。

伊藤計劃作品映画化プロジェクトであるProject Itohにおいて、原作刊行順に最初に映画化される予定であったが、制作会社であるマングローブの経営破綻により放映が延期、その後ジェノスタジオに引き継がれてようやく放映されることになった。

原作小説は既読済みでもう内容もうろ覚えだったが見ながらああそうだったそうだったと思い出しながら視聴。監視社会、平和、再分配というような社会派のテーマを含む作品であるが、やはり映像化ということで近未来SFガジェットミリタリーの部分を中心に楽しんだ。

原作はクラヴィスの一人称で、軍事や戦争を扱っている作品であるにもかかわらず非常に内省的なのであんまりアクション的な感じがしない(そこに設定的にも戦闘中は薬物やナノマシンで人工的に感情がフラットになっている、というところが面白い作品ではあるんだけれども)。それが映像化して立派なミリタリアニメになった。

ところで少年兵を容赦なく撃ち殺していて、子供が暴力を受けるシーンを忌避しがちな映像メディアで頑張ったなぁ!という不謹慎ともいえる感想を持ったが、よく考えると『そんな悲惨な子供にすら悲しいとも思わず共感することもできない』ということが重要な設定なんだから、このへんを描かないわけにはいかなかったんだな。

映像にして地の文章が無くなったからか、原作ではしょっちゅう触れられるエリシャ(クラヴィスの母親)のくだりが映画版ではまったく出てこない。クラヴィスのキャラクター描写でかなり重要な要素なのだが映像作品でこういう要素をバッサリ切ったのは英断であろうと思う。

映画は議会公聴会でのクラヴィスの発言がメディアを通してアメリカ中に届いているシーンで終了している。原作ではもうちょっとだけ先があるのだが、そのあと世界がどうなるのかはここまで視聴してきた人にとっては明白だし、元々さらっと書かれているだけだからこれでいいのかもしれない。

なおこの世界の未来は、既に映画化されている同作者の『ハーモニー』で書かれている。マングローブ倒産が無ければ順番通りに放映されていたんだよなぁ。

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