エクレア あなたに響く百合アンソロジー 全5巻

百合方面に力を入れ始めた電撃から発売されている百合アンソロジー。業界から引っ張ってきた強力な人選が良かったのか好評を博して現在5巻(無印, blanche, bleue, rouge, orange)目まで発売されている。

当初は1巻完結で短編予定で描かれているはずだが、続刊に伴って連作になっているものも多い為、興味のある方は(可能なら)無印からをお勧めする。自分は1~4巻に連作で掲載された結川カズノ先生の『雑草譚』が好み。

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概要

胸に響くのは、こころの鼓動

女の子同士の特別なカンケイ。あなたもそっと、覗いてみない? - 電撃コミックWEB

各巻毎の感想

1巻(無印)

『やがて君になる』の仲谷鳰先生とか『あの娘にキスと白百合を』の缶乃先生とか有名な人が揃っている。これてっきり百合姫を出してる一迅社だと思っていたら電撃からの出版なんだな。なので表記はKADOKAWAになってる。

色々な方向性の作品が掲載されているのでたいてい好みの作品が見つかると思う。私は結川カズノ先生の『雑草譚』が一番気に入った。『ひっつき虫』っていうのが単なる草の名前だけでなくて、クラスの女王様の金魚の糞をやっていた主人公にかかっているところとかにセンスを感じる。転校生の子の雑草であっても差別しない感性が、スクールカーストのクイーンビーに道具扱いされるような(言ってしまえば雑草みたいな扱いの)子であっても評価するところにかかってるってとこかな。私はこういうの凄い好きなのだ。

他の作品を読んでみようと作者さんを調べたらイラストメインのひとらしくてちょっと残念。もっともそういう人こそこういう機会でないと見つけにくいだろうから、アンソロジーを覗く価値はこういうところにもあるのかもしれない。

2巻(blanche)

電子書籍派なのでkindle化しないかなぁと思って放っておいたら、いつの間にかしてたので読んだ。(同時発売!とか謳ってた「やがて君になる」の4巻はさっさと電子化してた気がするのだが……)

アンソロジーなので作家陣は同じであっても話は全然別ものなのかと思っていたら、前巻で一番気に入っていた結川カズノ先生の短編の続編が載ってて驚いた。絶対あの子の話なんだろうなって思ってたらやっぱりその子の話だった。この年代の子たちの『本人たちにとっては必死な人間関係』の話ってヘテロ、ビアンを問わない普遍的な価値を感じる。

仲谷鳰先生の短編は「女の子が女の子を好きになる気持ちが分かるのに、どうして私の気持ちに気付けないの」……って話でもないのか。自分の気持ちに気づいて貰えなければそれはそれでいいみたいなところがなんか切ない。

こうしてみると面倒くささとか、拗らせとか、ビターな話ばっかりに味を感じるんだな、としみじみ思う。ネット上の感想をみていると、どうやらハッピーエンドでないと評価が落ちるらしい意見が散見されるから多分少数派なんだろう。そういう話こそ作家性が出るものさ、と思う一方で、ケモミミを封じると小児性犯罪を描く伊藤ハチ先生が一番強烈な作家性を出していた気もする……。

3巻(bleue)

よっぽど好評だったのかとうとう3巻目。アンソロは続刊するし、百合アニメ増えたしブームとは言えないまでも流行ってきた感はあるね。

2巻目で1巻の続きがいくつかあるから、お気に入りだった結川カズノ先生の連作の続きあるかしらと思ったらバッチリあった。これもう3部作通すと、ひなこ主人公だな。こういう子って百合に親しみを持つタイプの人とはそりが合わないことが大半だろうけど、作中ではっきりと「嫌な子」って評価受けながら中心になるの凄い。てっきりあざみちゃんのことを都合のいい側近ぐらいの扱いしてたのかと思いきや実は……って、あざみちゃんは無自覚にサークラの才能あるわ。植物ネタを使っての表現もお見事で、こういう暗喩とか出てくる話ってもっと増えてもいいと思うんだけどな。

おねロリ界の第一人者、伊藤ハチ先生が「幼女のパンツを見たことをきっかけに急接近、叔母姪の第一歩を踏み出す自伝」(←語弊有り)を描いていて感動した。この作者が描くと、作中のテーマである「好きなもの(おねロリ)を諦めない」という意思の説得力が圧倒的である。

4巻(rouge)

毎回毎回結川カズノ先生のシリーズを楽しみにしていたら今回はとうとう表紙も担当して俺も鼻が高いよ……(後方百合男子面)とか思っていたら最終章。普段曇らせ隊を自称しているような私だが、読んだら結局自分はベタな仲直りを期待してたんだなぁと痛感した。

あざみちゃんを傷つけた事実に自分自身も傷ついて、いつもの女王様的態度のまま離れようとする一方で二人で一緒にやっていたことに肯定的だったことを最後に示して去るの本当に辛い。自分のせいであざみが自身を卑下するのは耐えられない、みたいな気持ちが見えて。中学や高校にいったら大人しくなったって言われる子っているけど、ひなこちゃんはモロそれになりそう。柚香ちゃんは一緒にいてあげてくれマジで……。

そういうしめやかな気持ちで読んでいたのだが、伊藤ハチ先生の短編が「幼女のおしっこの音にこだわるお姉さん」の話で頭おかしくなるかと思った。幼女と恋愛してはいけないっていう線引きしてるから割とまっとうなのか……?お姉さん側が変態だと幼女側が認識してるのもなんか新鮮。相変わらず「自分が本当に好きなものを描いている」ことへの信頼が揺るがないお方である。

5巻(orange)

前巻で雑草譚が完結した結川先生次何描くのかと思ったら本格的なSFで意外。滅茶苦茶知識与えたらその結果取った『合理的な行動』がコレってSFしてるなぁ。なんかアンドロイドテーマ感ある(いや姫様は人間(?)なんだけどさ)。最後カニスには結構強引なのいいよね。

今回全体的に尺多めの作品が多くて嬉しいが、伊藤ハチ先生が42pも描いてる。早速おねロリ出てきたと思ったら回想シーンになって、そっちでもやっぱりおねロリで吹いた。全体を通すとどっちがおねでどっちがロリかなんとも言えないんだなこれ。珍しい作品かも知れない。

アウリ先生のマンガいっつも意味分からないけど今回最大に意味分からなかった。「まあ令和のJKにはわかんないか……」ってあったけど、平成のJKなら分かるんですかこれ?女の子が戦車になったのを見たのはファンタジスタドールのうずタンク以来だなぁ。

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