ダンジョン飯 – 九井諒子

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ここ数年でおそらく一番有名なマイナー漫画。なんか矛盾している気がするが一般人は全然知らない一方で、漫画のファンなら読んでいないと馬鹿にされるみたいな知名度がある。

そういう立ち位置の作品なのだが私はそんなことは特に意に介さず、ネットミームの「アイツ○○の話になると早口になるの気持ち悪いよな……」「よしなよ」の元ネタということで読んだ。

概要

待ってろドラゴン、ステーキにしてやる!

九井諒子、初の長編連載。待望の単行本化!
ダンジョンの奥深くでドラゴンに襲われ、金と食料を失ってしまった冒険者・ライオス一行。
再びダンジョンに挑もうにも、このまま行けば、途中で飢え死にしてしまう……。
そこでライオスは決意する「そうだ、モンスターを食べよう!」
スライム、バジリスク、ミミック、そしてドラゴン!! 襲い来る凶暴なモンスターを食べながら、ダンジョンの踏破を目指せ! 冒険者よ!! – コミック・ビーム

各巻毎の感想

1巻

ネット上で話題になっている漫画だったので前から気になっていたが、AmazonのKindleでセールをしていたのと、現時点で既刊がまだ2巻しかないので追いつきやすかろうと思って読み始めた。

世界観は昔懐かしのウィザードリィ的なダンジョン型ファンタジーRPGのそれである。そういった世界観につきもののモンスターたちを調理して食べていくのがメインとなる、有りそうでなかった作品。

ファンタジー世界の定番モンスターであるバジリスクやマンドラゴラへの考察などもそうだが全体的に冷静に描かれている。料理漫画はキャラクターが感じた美味しさの過剰な表現で宇宙空間に行ったりビームを吐いたりするがそういう表現は無い(魔法が存在する世界観だとそもそもやりづらい気もするが)。登場するモンスターの生態や特徴が、材料である彼らの退治と倒した後の調理の両方に絡んでくる話になっているのは面白い。作者の力を感じる。

コミックナタリーが主催するマンガ賞「コミックナタリー大賞」2015年度第1位だそうであるが、私が読んだ理由は冒頭で引用した元ネタを見たいというものだったので調べるまで知らなかった。このネタは「好きなものの話になると自然と早口になる」というオタクのサガを表している為か、自嘲的に使われていて好きなのである。

一巻の終盤で主人公ライオスが動く鎧の生態について語りだし、仲間のチルチャックに「アイツ魔物の話になると早口になるの気持ち悪いよな……」と言われるシーンが元ネタになる。私の様なオタクの語りは何の役にも立たないが、ライオスの魔物の知識は作中で凄い役に立っているのでそんなに悪いことでもないような気もするが……。

2巻

RPGの設定を真面目に考えるというのは、オタクなら誰でもやっていると言っても過言ではない。だいたいそういうのは一発ネタみたいになるのだが、そういう内容を真正面から描いてそこに料理要素を加えたのが本作である。

前巻よりも世界観描写に比重が増えた。相変わらずRPG設定をリアルっぽい世界観に落とし込むのが上手で、最初のゴーレムの話から感心した。てっきりなんかして食べるのかと思いきや、畑として優秀とは思わなかった。根を張ると土が固くなるので共生関係にあるとか面白い。こういう風に落とし込むのが評価されてるんだろう。

読んでると九井先生は絵が上手いなぁと思う。派手な描写が無くて凄い淡白なのだが少ない線で安定してる感じ。この淡白さは内容にも表れていると思うが、世の中にいろいろな派手な作品がある中でこれが圧倒的に評価高かったのを考えると、漫画読みの人たちもそういうのに飽きちゃってるのかなぁって気がする。とにかく「上手」なんだよな、この作者。

3巻

今巻は食事作りよりも世界観設定やDIYの内容が多い印象。魔法を使うのに血が必要なので鉄分補給の為にレバーを作るとか、オオガエルの皮で服を作ってテンタクルスの攻撃をかわすみたいな、この世界設定ならではの話が面白い。

ドラゴンに食われた人間を助けに行く、というそもそもの目的からして常識とはズレている死生観の作品だが、その辺の設定に言及する場面がある。どうやらこ の世界では魂が物理的に存在するらしく迷宮内ではこれが肉体を離れないので蘇生できるらしい。死自体が禁じられているって興味深い設定だ。

キャラクターの設定も結構明らかになる。マルシルの過去が明かされるという意外な展開。そこに出てきたファリンがライオスの妹だって最後のシーンになるまで気が付かなかった。こういう子だったのか……。後はかつての仲間のナマリと再会するが、まだ離れてから約一週間しかたってないことに一番驚いた……あんまり経過するとファリンが助からないから当たり前かもしれないけど。

読んだ後にネット上の感想どうなってるかな?と思って調べたら、雑誌の時点で既に読んでる人が多いのか特別三巻収録分の話をしている人があんまりいなかった。単行本化が遅かったというのもあるようだが、そもそも単行本派の人少ないのかな?

4巻

作中世界ではドラゴンはかなり高位のモンスターとされているらしいが、実際に出てきたレッドドラゴンの描写はまさしく「動物」という感じである。人間よりも賢いというファンタジー的な設定もなく、現実の狩りと同じような泥臭い手法で倒すことになる。倒した後も「体内のどこに死体があるのか?」というところから救出がスタートして、内臓を見て骨を取り出して……ともう料理漫画じゃなくて解剖学漫画みたいな展開。

元々、九井諒子作品の淡白さが作中の死生観に表れているなぁと前から思っていたが、ファリンの復活も凄いシステマティックに行われる。一応魂がどうたらという説明だってあるにはあるのだが、人間というのはまず物体であってしかるべき手順を使えば失った肉体だって元に戻るし人格も蘇るという、人間の精神に特別な神秘性を認めない冷徹さからはファンタジーというよりはSF的なものを感じられる。

話は一段落付いたが、マルシルがファリン復活に使用した禁術がこれからの話の展開に絡んでくるらしい。これでいったん終わっておけば綺麗だろうになぁと思わないでもないが、ファリン復活前にこの世界での死と復活の設定を解説する話と一緒に、狂乱の魔術師の前ふりだってやったんだしね。しばらく続くのかな。

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