バットマン:イヤーワン/イヤーツー

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バットマンのオリジンである『イヤーワン』、それに続く『イヤーツー』を収録。人気ライターのフランク・ミラーが担当しているイヤーワンの評価が高いようだが、個人的にはバットマン設定の美味しいところが山盛りになったイヤーツーの方が好き。

リアル志向でバットマン映画三部作を撮ったクリストファー・ノーランは、これに収録されている「イヤーワン」「イヤーツー」と、続く「ロング・ハロウィーン」「ダーク・ビクトリー」を通してバットマンに触れた、ということらしい(帯の煽り文句から)。たしかにリアルというかハードボイルド嗜好の話である。

1985年にDCコミックスは各キャラのオリジンの全体的な見直しを測ることになったが、『バットマン:ダークナイト』でバットマンの終焉を描いて好評を得たフランク・ミラーが今度はオリジンである『イヤーワン』も担当することになり、以降のバットマンはこの2作の影響下で制作されることになる。

バットマン:イヤーワン

12年ぶりに故郷のゴッサムシティに戻った若き大富豪、ブルース・ウェインは、バットマンとなって犯罪との孤独な戦いを開始する。一方、ゴッサムに赴任してきたゴードン警部補もまた、汚職に塗れた市警内部で、正義を貫くべく孤軍奮闘する。同じ志に燃える二人の男の道は、やがて交わるかに思えたが…。 – ヴィレッジブックス

時系列上は第1話となる作品であっても完全にバットマンを既に知っている人向けに描かれて、もう登場人物の説明なんて全然無しにどんどん登場する。中途半端に知識のある私はまぁ何とか読めたのだが絵柄のせいか「このキャラ、ブルースでいいんだよな?」って場面がたびたびあった。

清廉潔白な印象のゴードンが、身重になっている奥さんがいるにもかかわらず職場不倫してたので結構驚いた。腐敗したゴッサムの警察組織が実質的な敵となる本作だが、倒すべき上司に不倫の証拠を掴まれて絶体絶命のピンチ!みたいになるのに割と処理があっさりしてるので若干消化不良感ある。ところでバーバラと聞いて出てきたのがゴードンの奥さんだったので「あれ?娘じゃなかったっけ?」と思ったが、折り込みの解説に「交通事故死した弟夫婦の娘を養女として引き取っており、本編中に出てくるのは同じ名前だった姪の方のバーバラだそうである。

最後のシーン、ゴードンは「眼鏡が無いと何も見えない」って言ってるけど実際には気づいていたんだろうか。

バットマン:イヤーツー

かつてゴッサムシティを恐怖に陥れた殺人鬼、リーパーが復活した。あらゆる犯罪を憎み、罪人を容赦なく処刑するリーパーに挑んだバットマンだが、あえなく一蹴される。己の弱さを思い知らされた彼は、禁断の武器に手を伸ばしてしまう…。一方、素顔のバットマンことブルース・ウェインは、運命の女性にめぐり逢うが、彼女には大きな秘密が隠されていた…。 – ヴィレッジブックス

フランク・ミラー作であったためかイヤーワンの方が評価が高いらしいが、個人的にはこちらの方が好き。

  • バットマン登場以前にゴッサムシティでクライムファイターをしていた、ある意味では先輩にあたるリーパーがヴィランを務める。
  • ブルースはレイチェルという女性を愛するようになるが、リーパーの正体は彼女の父親であるジャドソン・カスピアン。
  • リーパーを倒すために普段は使わない銃を解禁。更に犯罪組織と一時休戦して対リーパーの同盟を組んでゴードンと敵対関係に。
  • その同盟関係でブルースの両親を殺害したジョー・チルが登場し、不殺のポリシーを持つバットマンが殺すことを決意する。

というかなりエモい、というかバットマンの設定的にこのネタだけで一作描けるような要素目白押しで、こんなに美味しいネタ一気に使っちゃっていいのって感じである。

リーパーは悪人は絶対に容赦しないで問答無用で殺害するし、それを非難して邪魔する人間も同様に殺してしまうすごいタカ派で、同じくクライムファイターでありながら「不殺のヒーロー」をポリシーとするバットマンとはその部分が対象的。Chapter1でこのリーパーにぼろ負けし、ポリシー崩してまでリーパー絶対殺すマンみたいなったブルースに、さらに畳みかけるように親の仇が現れてもうグラグラ。

こんな話に明るいオチなんてつくはずはないわけでビターなエンディングを迎える。でもジョー・チルが事故みたいな感じで死んじゃって「ブルース・ウェインは父の為、母の為に引き金を引く――」みたいな事描かずじまいなのはちょっと逃げを感じるかなぁ……。ちなみに折り込みの解説冊子によると、ジョー・チルの設定は時代によってころころ変わっていて、最初に名前が付いた時のお話は「ギャングのボスだったが、自身がバットマンを生み出した元凶の人間であることを知った部下たちに殺される」というものだったらしい。ブルース・ウェインが手を下さない結末という意味では同じだが、こっちの方が業を感じて好きだな。

そんな感じでChapter4 で一度話が終了するのだが、続きとなるChapter5のフルサークルというエピソードが収録されている。後日談というわけではなく、既にロビンと共闘している時代にイヤーツーに連なる事件が起きたという感じで、イヤーツーの半分くらいの分量のページ数がある続き物。ライターはイヤーツーと同様マイク・W・バーだが、ジョー・チルの息子と孫が登場して両家の因縁に決着がつく大団円で話を締めたかったのかもしれない。

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