紙の動物園 – ケン・リュウ

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中国系アメリカ人であり、中国文化を背景にしたSF作品で注目を集める劉宇昆(リウ・ユークン、英名:ケン・リュウ)の日本オリジナルの短編集。表題作の「紙の動物園」はヒューゴー賞とネビュラ賞と世界幻想文学大賞という、SF・ファンタジーの代表的な3賞を同時受賞するという史上初の快挙を成し遂げた。

印象に残った作品

表題作の「紙の動物園」は確かに高い評価を受けるだろうなぁ、とは思うもののこういう題材をとるのはちょっと卑怯だよなぁとも思う。紙の動物が動き出すのって何かの暗喩なのかな?

自分が印象に残ったのは次の二編。

結縄(けつじょう)

最初何の話なんだ?また途上国文化に触れる話か?と思っていたが滅茶苦茶現実的な話だった。ミャンマーの部族であるナン族は縄の結びを使って表現する文化を持っており、製薬会社に勤めるトムは部族のソエ=ボを連れ出し、科学者たちの前で様々な結び目の作りを再現させる。何故なら結縄に長けた彼らの技術は、タンパク質の幾何学的な連なりのアルゴリズムの新しい発見をもたらし、創薬のブレイク・スルーになりうるから。哀愁に満ちた結末もいい。アイデア賞だな、これは……。

良い狩りを

凄い予想外の展開だったのでびっくりした。妖怪モノかと思いきや文明化でその要素が薄れていってスチームパンクになって、そして最後にトランスフォーマーになる。最初っからトランスフォーマーやってればいいじゃんってわけでもなくて、動機は最初の妖怪関連の話に、方法はスチームパンクにそれぞれ繋がっているのが面白い。

SFとオリエンタル

最近のSF界は人種・性別・マイノリティに対して結構ナイーブな状態である。

アメリカSF界で繰り広げられているカルチャー戦争の犠牲になったヒューゴー賞 Sad & Rabid Puppies – 洋書ファンクラブ

上記のリンクに詳しいが、男性や白人が優遇されるように工作をするサッド・パピーズ、ラピッド・パピーズという集団がヒューゴー賞に悪い影響を与えている(パピーゲート事件)。そういう状況に対抗する動きもあって、結局2015年の各賞が該当無しだらけになってしまったなか、ヒューゴー長編大賞は中国人作家、劉慈欣(りゅう・じきん)の『三体』が受賞した。

「紙の動物園」の解説にもある通りケン・リュウは中国SFの英訳をしているが、この作品も彼が訳したものである。この短編集の作品を読んでいると中国人に対する差別が山ほど出てくるので現実の方もよっぽどなのだろうなぁと思わせるが、その中でこういう結果が出ていることは感慨深い。ケン・リュウは非英語圏の作品が評価される流れの筆頭にいる作家であるようだ。

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