屍者の帝国 – 伊藤計劃, 円城塔

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2015年10月に映画化した作品。故人となった伊藤計劃の設定を受け継いで円城塔が完成させたという経緯があり、更に古典フィクションのキャラが登場するパスティーシュでもある、という珍しい作品である。

虐殺器官、ハーモニー、The Indifference Engine、MGS4を既読であるため、しばらく伊藤計劃からは離れていたのだが映画化が決まった為に慌てて読むことになった。正直、屍者の帝国は本人が書いてるわけじゃないし、いいかなぁと思っていたのである。伊藤計劃をやたらに持ち上げる風潮(に関しては円城塔もあとがきで触れてて「ああやっぱり」みたいな気持ちになってしまった)に乗りたくないという気持ちがあったことも後押ししている。

死体を「屍者」として復活させて労働力として利用する、現実の歴史とは異なる方向に進んだ19世紀末が舞台。SFジャンルの中の歴史改変ものに該当し、イ メージ的にはスチームパンクが近い(著者も意識していたのか、ギブスンとスターリングのディファレンスエンジンのネタも登場する)。

いろいろな古典作品のキャラクターが登場することも本作品の特徴である。中心となっているのはメアリ・シェリーのフランケンシュタインで、あとはシャーロック・ホームズ、007、ドラキュラ、カラマーゾフの兄弟、風と共に去りぬ、あたりが元ネタになっているようである。

伊藤の世界観を余すところなく書こうという円城側の配慮なのかもしれないが、内容が世界の描写にあまりによりすぎている気がする。創作初学者のやりがちな設定の羅列みたいになってしまっていて、全編にわたって設定の説明と、この世界ではこのように考えられていましたが実はこうだったのです!が延々と続く。なのでどうしても「さっき読んだばっかりで自分の中でまだ当たり前の前提になってないよ……」という気分になってしまう。本当は数巻に渡ってシリーズ化するような内容なんだろうな。

ところで本作品の「菌株」は、まさしく今メタルギアソリッドV ファントムペイン(記事)をプレイしている私からすると、おや……?となる設定だ。「言語」「言葉」という単語もはっきり出ているし、ファントムペインに登場する声帯虫の設定は、これに影響を受けているんじゃないだろうか?

ただしパクリだ!というわけではない。そういう人は伊藤計劃と小島秀夫(メタルギアシリーズのプロデューサー)の関係を知らない人だろう。今度こういう設定を考えていて……みたいな話をしていても全然おかしくない。円城塔が屍者の帝国という作品を再現し、小島秀夫はコナミ最後のプロデュース作品でオマージュ設定を使用したと考えると結構感慨深いと思うのだがどうか?

追記

この原作を読んですぐに映画に臨んだ(記事)が「菌株」は影も形も無かった……。まぁあんな思考実験みたいな会話、映像でやりにくいから仕方ないけどね。

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