知覚の扉 – オルダス・ハクスリー

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『すばらしい新世界』で知られるオルダス・ハクスリーが、幻覚剤メスカリンの服用による鋭敏になった感覚での体験を通して人間の意識について書いたエッセイ。意識改革ブームに先鞭をつけ、1960年代に音楽などのアート文化に影響したサイケデリック文化へと繋がっていく。

幻覚剤メスカリンの服用体験から、閉ざされた人間の知覚の可能性と芸術の真の意味を考える。以後のさまざまなニューエイジ運動の先駆けとなった名エッセイ。解説=菅靖彦 – 平凡社

元々サイケデリックバンドのドアーズ(The Doors)のバンド名の元ネタとして知っていた。映画のドクター・ストレンジ(記事)を見た後、作中の魔法表現には1963年に原作がスタートした当時のサイケデリックブームの影響を受けている、と聞いて「こういうところにも影響しているとは面白いなぁ」と興味を持って読んでみた。

のであるが、解説なども含めて180p程度しかないのに読むのに偉い苦労した。なに言ってるのかさっぱりなのである。これは訳者あとがきまで読んで理解するしかないなぁ、と本編と8個もある充実した付録を読んだら、訳者の河村錠一郎の文章もなかなか狂っていて、最後に菅靖彦がつけた解説でなんとなくおおよその概要が掴めた。

オルダス・ハクスリーは作家として知られていた人物であるが、ある時ペヨーテと呼ばれるサボテンから採取できるメスカリンという幻覚剤を使い、鋭敏になった感覚をもって見た人間の意識について書かれたのが本書である。解説にも書かれているが、自分を観測する人間を置いたうえで服用し、幻覚体験にも飲まれずに冷静に筆致する手腕は確かに凄い。名家に生まれた人間らしく有名な芸術作品で説明しまくることもあって、浅学な私にはあんまりついていけなかったが……。

1954年に本書が発行されて意識改革のブームに先鞭をつけ、精神科医の作った造語に由来してサイケデリック(psychedelic)なる名前が産まれ、60年代にヒッピー文化と共にアメリカに広まった……というのが大まかな流れであるようだ。解説には50年代に流行したビートニク文化の作家ウィリアム・バロウズとアレン・ギンズバーグの名前もでてくるが、この辺もロック文化と関わりが深い(余談ながら、ドアーズから知覚の扉を知った私であるが、ウィリアム・バロウズはロックバンドのスティーリー・ダンやソフト・マシーンから知った人間である)。

今この文化をどのように評価するのかは何とも言えないが、人間の内面宇宙は薬の様な科学的な作用の説明がつくもので調整が効く、というような部分は納得できる。あやふやな外部のものよりは人間の内部に作用する神経信号によって規定できるという方が理解できるからだ。これを突き詰めるとサイバーパンクになるのだが、こういう風にいろんなテーマに合致するところがあるから現代でも生きている本なのだろう。

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