世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち – マイケル・ルイス

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『マネー・ボール』、『フラッシュ・ボーイズ』で有名な金融ノンフィクション作家マイケル・ルイスがリーマンショックによって暴落した株価を利用して大儲けした男たちを書くノンフィクション。2015年に映画化している(記事)。

世界中が、アメリカ発の住宅好況に酔っていた2000年代半ば、そのまやかしを見抜き、世界経済のシステム自体が破綻するほうに賭けた一握りのアウトサイダーたちがいました。難攻不落の鉄壁のまやかしを演出するのは、ゴールドマン・サックスなどの投資銀行、ムーディーズなどの格付け機関に、米国政府。彼らに挑んだその大相場「世紀の空売り(ビッグ・ショート)」を『マネー・ボール』のマイケル・ルイスが描きます。 – 文芸春秋

  • フロント・ポイントのスティーヴ・アイズマンら
  • サイオン・キャピタルのマイケル・バーリ
  • コーンウォール・キャピタルのチャーリーとジェイミーら
  • ドイツ銀行のグレッグ・リップマン

(実際には他にもいただろうけど)彼らが世紀の空売りで大成功を果たしたメンバーであり、基本的にこの4組が状況の中で何を思い行動してきたかがじっくり書かれている。読んでいる当初は人物描写に説明を割き過ぎではないか?という気もしていたが、良く考えたらあの騒動で何が起きていたのかを解説する本なんて他にもあるわけで、その中で勝利した人間にフォーカスしてヒットした本書は差別化の勝利なんだな。

序盤は変人揃いの彼らの経歴と、サブプライム・モーゲージ債が大暴落する未来を読んで売りに張る経緯。中盤は投資業界のほとんどに対して逆張りをしている自分たちが本当に正しいのか各々が投資業界や格付け業界にアプローチしていく章。そして終盤は実際に崩壊が起きてどうなったのかが書かれている。

最後に藤沢数希が分かりにくいCDOやCDSの解説をしてくれているので、経済・金融に詳しくない人はこちらを先に読むと良いかもしれない。自分も先に読んでおけばよかった。なお余談ながらこの人物は、恋愛工学なるものを提唱して炎上状態になった人物でもある。そういうケチがつかなきゃ素直に良い解説だなってなるのだが……。

サブプライム・ローンの破綻問題を扱った内容を読むのはこれが初めてではないが、共通して出てくる「扱っている奴だって分かっていない問題」は実は金融に全く縁のない自分にも結構突き刺さる問題である。きっとこんなのは自分が未熟だからであって「上」はそうでもないんだろうなと思いきや、私の何倍以上の給与を貰っているような人々ですらそうなのだった。それなら一体誰が把握していると言うのだろうか?

アイズマン、バーリを筆頭として登場する人物は業界からのはみ出し者、変わり者ばかりだ。業界の流れと真逆の方向に張った人間なのだから当たり前かもしれないが、自分を信じて周りに拒否されても突き進んでいく姿は見習いたい。なにせ作中で何度も出ている通り「ウォール街の人間は総じて頭がいいのだからそんな間違い犯すはずがない」という疑問が常にあるのだから。

そんな逆境を潜り抜け最終的に大勝利に終わったはずなのに、社会の崩壊を目の当たりにしてまるで明るくはないメンバーが悲しい。特にバーリはサイオン・キャピタルの顧客を儲けさせたのに、誰からも礼を言われなかったって言うのが……。今まで散々「鉄板の住宅市場で空売りとかどういうことなんだ!」とか貶してきたから今更手のひら返せないんだろうな。もっともこの本が有名になったことで、彼らも正しく評価されていることだろう。

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