メタルギアソリッドV ファントムペイン – 野島一人

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人気ゲームMetal Gear Solid V The Phantom Painのノベライズ版。原作ゲームの未完成ぶりにモヤモヤしていた私は衝動的に買って読みふけってしまった。

原作ゲームは100時間以上プレイしていて(記事)内容はもうほとんど知っている状態である。にも拘らずノベライズ版を発売日に速攻で購入したのは、このゲームに対してモヤモヤする部分がたくさんあったからだ。プレイした方はご存じのとおりこのゲームは明らかに未完成で、別媒体でも良いから補完が強く望まれている状態なのである。

著者の野島一人はこれまでにもメタルギアのノベライズを担当しており、ゲームのノベライズという基本的には評価が低くなりがちな作品において高い評価を獲得するに至っている。すでにこのゲームの前作にあたるメタルギアソリッド ピースウォーカーのノベライズを読んでいる(当サイトの記事)がこれもよくまとまった内容だった。

内容・原作ゲームとの相違

目次に第1章「報復」、第2章「種(RACE)」、エピローグとあってさっそく嫌な予感。原作は本来V章仕立てであったが結局2章までの尻切れトンボになってしまった。原作ファンとしてはその後に続く蠅の王国あたりの補完を期待したいところだが結論から言うとそれは叶わなかった。

レナード・ルインなる原作には登場しないオリジナルキャラが登場する。9年前のMSF時代から継続して所属しているメンバーはミラー以外は数人しかいないと描写されているがその中の一人であり、ヴェノム・スネークの背景については当然知っているはずである。さらに作中では情報部門の統括者である為ストーリーの展開にも関わっている。重要な情報にも通じており、特にスネークイーター作戦の真意、すなわちザ・ボスの裏切りがカバーストーリーであることも知っているのは驚いた。

原作と比較して仕事(≒ゲームにおけるミッション)を受注した経緯等が詳しく書かれている傾向にあるが、レナードはミラーやオセロットとの会話で読者に説明する役割を負っているようだ。一度も本を書いたことの無いジャーナリストを自称する男で「ビッグボスの話をいつか書く」と発言しているのでメタ的に何かあるのかと思っていたが、解説にもあるとおりミッション形式の原作を一連の物語として書くためのサブキャラのようである。

基本的に原作と同じ流れだが、時々異なる展開になる。例えば声帯虫事件の収集が第一章中に終わらず、二章以降も続く。ボルバキア投与はしなかったの?というと一章中にしている。にも拘らず人間同士の不信感と諍いとして残ってしまっているというのは原作になかった部分で面白いところだ。作中でもあったカズの「お互いを疑え」宣言が悪い意味での後押しになってしまっているというのは悲しい。現実の世界でも80年代から猛威を振るったAIDSに対する米政府の失策に例えられているが、政治経済描写に詳しいノベライズ版らしい補完だろう。

設定の補完について

作中のモヤモヤが解消されるかと思ったが、何とも言えない。それでも作中の補完・補強となる文章はいくつか散見される。たとえばミラーが右腕と左脚を失ったのはいつなのかあやふやだったが、9年前のマザーベース襲撃時であることが明文化されている。

設定上などでも重要なところになると、イーライを教育した人物とは?、世界を売った男とはなにか?、ヴェノムが自分の正体に気付いたのはどのタイミングなのか?、スカルフェイスはヴェノムの正体に気付いていたのか?ヒューイのクラーク博士に対する言及、あたりがファンが注目すべきところだろうか。(もっとも原作と同じかどうかは分からないが)

正直ゼロが「恐るべき子供たち計画」を行ってビッグボスが離れていく流れに釈然としないものを感じていたのだが、ゼロ(=サイファー)の目指す世界の有り方と関わっていたことを知って腑に落ちた部分がある。ビッグボスとゼロの思想上の対立を象徴する出来事であり、「天国の外(アウター・ヘブン)」「世界を売った」という表現もここに関わっていて興味深い。

最後に小島秀夫の解説が掲載されており、タイトルの幻肢痛(ファントムペイン)がシリーズ終了というメタ的な意味も持っていることなどが語られている。まさしくラストという語り口であるが、ファンは知っている。どう考えても完結していないMGS3のときに三部作とか言っていたりもしたが、そのあと何作も出ていることを……。

余談であるが途中にグレートゲームに言及する箇所がある。なんで突然シャーロック・ホームズに出てくるワトソンの話が出てくるんだよと思う方もいるのかもしれないが、小島秀夫と伊藤計劃のことを知っているとニヤリとしてしまう一文だ(記事)。私も見事にそうなってしまった。

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