蠅の王 – ウィリアム・ゴールディング

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無人島に流れ着いた少年たちが閉鎖環境の中で邪悪を露呈する……といった体の古典文学作品。

感想

読む前は「どんな邪悪が拝めるのか……?」と期待していた本だったのだが、意外なことに肩透かしを食らってしまった。

上手くやれるはずだったのに、上手くやれなかった……という体で語られていることに違和感を覚える、というのが一般的な読者と離れている私の見解かもしれない。最後のシーンでラーフも救助に来た軍人も「本来上手くやれるはずだった」と発言しているので、一応そういう印象で書かれているはずだ。

人間の内に潜む邪悪さが……的な話だとは思うのだが、私は失敗に終わった起業やプロジェクトを見ているような気分で読んでいた。資本金が足りないとか、優秀な人材がいない、などで失敗に終わっても「そりゃそうだろ」としか思えないのと同じで、この作品に関しても「いや闇とか関係ないだろ」みたいな感想になってしまったのである。

無人島に閉じ込められた人間たちが本性を現して……みたいな考えが受け入れられないのも理由の一つだろう。私は「人間の本性」など信じていない。加えて普段は穏やかにしている人間が怒りを見せると「本性を出した」という人間など大嫌いだ。実際には本性なんてものは無くて、環境に合わせて人格も適合していくというだけだろう。

私が読んだ集英社文庫版では、訳者の平井正穂が解説で「子供は無垢で無邪気であるように思われている」という前提を書いているのだが、この辺も私個人と全然感覚が違う。私は子供が無垢だと思ったことは多分一度も無い。

どうあれ「真実で賢明だった」と最後の最後に評されたピギーが犠牲になるような社会であったわけで、そんな糞みたいな所で上手くいかなかったからって他の人間社会にまで暗い気持ちになることないんじゃないだろうか?

本当に怖い作品は、読んだ後に現実の人間や社会に対するものの見方が変わるものなのだが、これ読んで人間が怖いとは思えないよな……。無人島という資本の無い閉鎖環境でこういう結果に終わった事よりも、基本的には法律が守られてGDPが世界第3位の日本ですら色々な事件が起きている事の方がよっぽど怖いからね。

余談

実はこの作品を読んだ最大の経緯は、メタルギアソリッドV ファントムペイン(記事)というゲームにこれを元ネタにした要素がいくつか出てくるので、有名古典文学読破を兼ねて読んでみるかというものだった。

本来ゲームに収録するはずだった「蠅の王国」というまんまなタイトルの章がお蔵入りになってしまったので本来はもっといろんな要素が出てくるのかもしれない。補完の要素を含むノベライズ版(記事)では若干元ネタに反映した設定があり、「ほら貝を持っている間の発言権ルール」があったり、モブキャラにラーフという名前が付いている。ジャック(本名はジョンだが)も出てくるが、それは関係ないかな……。

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「蠅の王 – ウィリアム・ゴールディング」への2件のフィードバック

  1. この本の本質を理解するには、当時の時代背景を抑えておく必要があります。
    第二次世界大戦での悲劇(主にナチス)を目にした作者・「子どもは無垢な存在である」という当時のイギリスにおける通念・キリスト教的考え・パブリックスクール…
    挙げればまだまだありますが、それらをふまえて読むとまた印象が変わると思います。

    1. コメントを頂きありがとうございます。3年くらい前に書いたものなので何書いてたかなぁ自分と思って読んでみたら、しょうもないことを書いていて愕然とした次第です……。古典文学は前提となる背景への不備で理解が及んでいないな、とは常々思っているのですがキリスト教由来などの下地があったのですね。

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