神無月の巫女

いま俺に出来るのは、せいぜい地球を救うことくらいだけど。お前たちの為にケジメをつけたいんだ

2004年放映。まだ百合作品の数が少なかったころに放映された金字塔的な作品であるが、最大の見所はカワイソーマさんことソウマさんのイケメンぶりである。

Sponsored Link

百合+ロボバトルというなかなか見かけないジャンルの作品。普通そう聞いたら女性パイロットのチームメイト同士で百合するように思われそうだが、この作品で基本的に味方側でロボット乗るのは男性キャラの大神ソウマさん。この時点でどういうアニメだよ!?と言いたくなる。

アニメ版『マリア様がみてる』1期が2004年1月~3月で、この作品が同年の10月~12月なので百合作品が認知されてきた初期の頃に放映されたことになる。そういうわけで初期の金字塔的な立ち位置にあるのだが、とにかくこの作品、後世からはカワイソーマさんが話題になる作品で「どんだけ酷いんだよ?」と思って見てみた。つまり百合作品を男目当てで見たわけである。

よく百合作品の男性キャラの存在に浮いて議論になるときに「男性キャラがいるのに女性を選ぶから際立つんだろ!」という意見が挙がるのだが、ソウマさんはある意味でこの究極だと思う。少女漫画の王子様キャラに熱血要素が加わったような人物で、①本来は敵側のキャラ、②洗脳から(姫子への愛で)自力で脱出、③敵が狙う姫子をロボを使って守る、という主人公そのものと言わんばかりのキャラクターである。

非の打ち所の無いイケメンキャラなのだが、ソウマさんが「姫子は渡さない!うおおおおお!」とか言ってるそばから、千歌音にNTRてる1話のオチ自体が作品自体を象徴しているような気がする。以降も姫子を守護るイケメンムーブを続けるが、結局姫子は千歌音を選び、ソウマさんはラストバトルの犠牲になって死亡。

Sponsored Link

私ソウマ君にキスされて千歌音ちゃんの良さ分かった!……って違うよクソ!少女漫画の文脈で王子様系イケメン描くとなんでいっつもこんなツラい結末が待っているんだろうか。そんな結末を迎えても姫子を守るため冒頭で引用した発言をして地球を守るわ、ツバサ兄さんから「人生空虚じゃありゃせんか?」と煽られても後悔は無いと返すわ、全編通してもはや聖人。

さてその一方でそんなソウマさんから姫子を奪った恋敵が千歌音である。このキャラも百合業界では強烈なキャラクターとして知られている。事前のイメージからするとクレイジーサイコレズの印象があった千歌音にはキチガイぶりを期……予想していたのであるが、案外そうでもないというか、重いけど「思い詰めてる良い子」って感じで意外だった。

見ていると執着しているはずの姫子をソウマさんに送り出すようなシーンが多く、予想していたよりけなげな印象である。なので8話目でまさかのオロチ寝返りで「大谷育江のレズ煽りが効いたか」と思っていたが、実は「二人の巫女は最終的に戦わなければならないので、姫子を生かして自分が犠牲になる」ための前振りであることが終盤明かされるので実際には裏切っていない。姫子をレイプしたり地球を滅ぼしたぐらいの概ね善良な子と言える。

女性が恋愛の相手に女性を選ぶ結末をストレートに描写した本作は百合作品が増えてきた現在においても際立っているが、そこにはソウマさんのあんまりな扱いがコントラストとして効いている気がする。ハッピーエンドで綺麗に締めた作品は何年もたってから語られる印象があんまりないが、この作品はソウマさんのおかげでハッピーエンドなのに後年色々言われる作品になっているように思われる。

Sponsored Link

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です